サンタフェのハイウェイを北に60マイル。ダウンタウンの裏通り。
清潔とは程遠い質素なバーの薄暗いカウンターにJBはいた。
JBの二つ隣のスツールで、安物の服と香りだけは50ドル分の香水を身にまとった女が、
手の甲にまぶした塩を舐め、
4分の1にカットしたライムを乱暴にかじりながら、ジンを飲んでいた。
ジンにはライムがよく合う。JBは、初老のバーテンダーにギムレットをオーダーした。
「ギムレットには早すぎるわよ」
彼女は、爬虫類のそれを連想させるような大きな舌で手の甲に残った塩を舐め取り、JBに
微笑みかける。
彼女の透きとおった緑の瞳をJBは見つめることができない。
「すまない。気の利いた台詞は、旅の途中で落としてしまったようだ」
晴れやかな出会いには、それを遥かに超えた辛い別れがついてくる。そんな当たり前のこ
とにすら臆病になってしまった。
さよならは、束の間の死だ。
JBは飲みかけのギムレットと彼女を残したまま、バーを後にした。
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